【みんなのまち 大阪の肖像 第2】@大阪中之島美術館。昭和(戦後)~現在の大阪関連美術作品、デザインコレクションがおもしろい!

温居さんちのダイニング

大阪中之島美術館で第1期 明治・大正・昭和(戦前)に引き続き、その後の大阪関連美術作品と大阪の企業(家電、繊維、百貨店、電鉄、住宅…)の広告、製品の展覧会が開催されています。

目次

大阪中之島美術館 みんなのまち 大阪の肖像

大阪中之島美術館は長い準備期間を経て2022年2月にオープンした美術館。
開館記念展として、ずっと大阪関連のコレクション展が開催されています。

8月6日からは 「第2期/「祝祭」との共鳴。昭和戦後・平成・令和」ということで戦後復興期からの美術作品、広告やパッケージ(ビジュアルデザイン)、家電製品(プロダクトデザイン)、実物大の工業化住宅展示まである大がかりな展覧会です。
見ごたえありです!

第1期は歴史物語を見る感覚でしたが、今回は直接今の自分に繋がってるという実感がある展示です。
美術作品では戦後すぐの焼け跡や復興しつつある町の風景など、線や色に希望を感じる絵がたくさんありました。
リアルに描いてある絵よりも、ちょっと抽象的な方が勝手に想像できるからか、希望の光が強いように感じました。
ほぼ写真撮影不可ですが、いい絵がたくさん展示されています。

盛場近し 前田藤四郎 1951 リノカット

広告あれこれ

百貨店・電鉄会社・繊維会社のポスター、リーフレットなども多数展示されていました。
リーフレットやパッケージは透明ボードに挟んで展示されており、表裏全部見えるのでとても興味深い。
こんな作家(デザイナー)がこんな仕事しておられたのか!という発見も多数。
スピード狂の画家、菅井汲さんは阪急電鉄宣伝部におられたんですね。
デザイナーだったとは知りませんでした。
ごく普通のポスターが展示されていて、同姓同名の別人がおられるのかと思いました。

関西の有名デザイナーは百貨店宣伝部に在籍しておられたイメージがあります。
早川義雄さんといえば京阪百貨店初期のポスターが印象に残っていますが、近鉄百貨店時代の仕事がたくさん展示されていました。

早川義雄のポスターいろいろ 1950年代


独立されてからの「カロン洋裁学校生徒募集」ポスターも多数。
やりたい放題?でおしゃれです。

なんといっても日本モダンデザインの父、今竹七郎さんのデザインが感動的でした。
大阪髙島屋宣伝部に在籍しておられたそうです。
百貨店とは関係ありませんが、オーバンド(輪ゴム)パッケージやメンソレータムのパッケージなどが有名です。

パッケージも中身の製品もロングライフなんて、理想的です。
その他東洋レーヨン(現在の東レ)のポスターが構成・色・文字…隅から隅までとてもすばらしい。
茶色の使い方がおしゃれ!壁から剥がして持って帰りたかった。
商品名に手描き文字が使われている小さい化粧品?パッケージデザインもすてきでした。
手描き文字は「暮しの手帖」の花森安治さんの手によるものが日本一だと思っていますが、今竹七郎さんのもいいなあ。

楽しく勉強になる、充実の展示でした。

プロダクトデザイン

1950年代~家電製品が展示されていました。
パナソニックミュージアムみたい…と思ったらパナソニックミュージアムから借りたものでした。
シャープミュージアムから借りた製品も。
卓上電子レンジのようになにこれ?なものもありましたが、むかしの家電製品は素朴でかわいい。

ダサイなあと思っていたもの…昭和40年代~「家具調テレビ」というのが多くの家にありました。
あれは「欧米のマネから日本独自のデザインへ」というとても大事なデザインだったんですね。
社内にプロダクトデザイナーを雇って本格的にデザインに力を入れ出した時代。
サンヨーの家具調テレビ広告のロゴをイサムノグチが筆文字で描いていました。
「日本」
こんな大物が関与しているなんて…相当力が入っていたことがわかります。
時代をひっぱる、人間が生活の場で使う電気製品のメーカーが大阪には多くあったんですね。

工業化された温居さんち

工場で作った材料を現場にもっていって組み立てる、システマチックな積水ハウスのプレハブ住宅が展示室にどっか~んと建っています。
1970年代の温居(ぬくい)さんのお宅。
夫婦と子ども二人、千里ニュータウンに平屋を建てたという設定です。

当たり前だと思っている水洗トイレ、ユニットバス、キッチンセット、アルミサッシなども、工業化による新しい材料だったのね、と気づきました。
スタッフの方が、中に入ってみてくださいと案内してくださいます。
撮影はOKですが、手を触れてはいけません。

おうちに上がると、小・中学生時代の友だちの家に入ったようでした。
家具も家電もなつかしいデザイン。
床の間つきの和室の畳は新しいにおい。
背の低い扇風機が置いてありました。
和室では低く、洋室では高く、高さがかえられる扇風機というのもこの時代にできたそうです。
エアコンより扇風機がメインだったもんなぁ。
居間にはテクニクスのステレオ。
ターンテーブルにはビートルズのアビーロードが置いてありました。

壁にかけてあるLPジャケットはビートルズ、憂歌団、カーペンターズ…1970年代でありました。

現代美術セクション

古いものばかりではなく、最近の作品もあれこれありました。
林勇気さんの「瞬きの間」という映像作品がおもしろい!
大きな壁いっぱいに昭和後半のフィルムの断片をつなぎ合わせ、透明プラスチックコップの底越しに見た映像が投影されています。
年末に自動車で実家に帰る途中にエンジントラブルに遭い、携帯電話もつながらなくて…というストーリーです。
起こっている出来事はドキドキハラハラですが語りは淡々。
途中からは暖をとるための焚火の映像となり、火が燃え尽きて静かに終わります。
兵庫県立美術館で見た、生活雑貨がすごいスピードで流れていく大きな空間「another world – alternative」も印象的だし、おもしろい作家さんです。

最初の展示室から最後の展示室まで、ずっとおもしろいまま終わる展覧会です。
同時開催の岡本太郎展は激コミらしいですが、こちらは冷房が寒く感じるほど空いています。

みんなのまち 大阪の肖像
会場 大阪中之島美術館5階展示室
会期 8/6~10/2 月曜休館(9/19除く)
時間 10:00~18:00(入場は17:30まで)
観覧料 一般 1200円、高大生 800円

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