【ルードヴィヒ美術館展】@京都国立近代美術館。20世紀美術の名作がいっぱい!

ルードヴィヒ美術館展 京都国立近代美術館
夕方の美術館

20世紀美術~現代美術作品までを所蔵するドイツのルードヴィヒ美術館のコレクション展です。全部見るとあれこれ考えることがいっぱい。充実の展覧会です。

目次

ルードヴィヒ美術館

ドイツの西部、ケルン市が運営するルードヴィヒ美術館は、市民からの寄贈作品で成り立っているそうです。
弁護士ヨーゼフ・ハウプリヒが収集した表現主義、新即物主義の作品。
実業家ペーター・ルードヴィヒと妻イレーネが収集したピカソ、ロシアアヴァンギャルド、アメリカンポップアートの作品。
その他写真や現代美術作品も多数。

ルードヴィヒ美術館展

展示室に入るとすぐチラシのメインビジュアルになっているアンディ・ウォーホルの「ペーター・ルードヴィヒの肖像」とオットー・ディクスの「ヨーゼフ・ハウプリヒ博士の肖像」がかかっています。
美術館メイン支援者の肖像画ですね。
アンディ・ウォーホルのはおしゃれイラスト風で、もうええって…ってかんじですがオットー・ディクスの絵はとても味わい深い肖像画です。
それ以降の展示室はドイツモダニズムからはじまり、現代美術まで、時代の流れに沿ったわかりやすい展示でした。

ドイツモダニズム

最初の部屋は表面的な光の表現「印象派」に対抗する?内面重視の表現主義作品。
「ブリュッケ(橋)」と「青騎士」ってグループの絵が展示されていました。
ブリュッケの作家は筆遣いも色も大胆で、印象派よりぜんぜん印象的。
キルヒナーの「ロシア人の女」はナチスの「退廃芸術展」に出展されたそうです。
絵の前にゆくとひっかかってなかなか先に進めないような絵です。
この展覧会には関係ないのですが、キルヒナーの絵は「アルコール中毒の自画像」など どれも強烈です。
良いけれど、重たい絵。
「青騎士」といえば、のカンディンスキーの「白いストローク」という絵もありました。
この日本語タイトル、昔の青春マンガみたい。

今回注目せずにはいられなかったのは「ノイエザッハリヒカイト(新即物主義)」です。
主観をまじえず冷静に対象を描写する作品…ということは表現主義の反対ですね。
ナチスに弾圧されてた表現主義と反対の立場だけど、こちらもナチスに弾圧されたという美術運動です。
日本でノイエザッハリヒカイトの収集に力を入れている美術館やその展覧会をきいたことがありません…たぶん知らないだけ。
ドイツの美術館コレクション展ならではの貴重な機会。
といっても、わたしがノイエザッハリヒカイトに造詣が深くて注目したわけではありません。

尊敬するデザイナーの先輩がオープンされた小さな雑貨店の名前が「ノイエザッハリヒカイト」だったのです。
店名の由来を聞いてもはっきり答えてくださらないので、考えるヒントがほしかったのでした。
センス抜群の先輩はご主人の転勤に伴いなぜか仕事をやめてしまわれました。
畑違いの事務の仕事に就き、副業として古いアパートの一室で小さな雑貨店をオープンされました。
病院の仕事が休みの日だけ開いている、モノトーンのものしか置いていない店。
とてもセンスのいいお店だったのですが、アパート取り壊しの際閉店されました。

徹底的に状況にあわせてシンプルに行動した結果があのお店だったのかなぁ。
最近会えてないけれど、やっぱりかっこいい先輩です。

ロシア・アヴァンギャルド

キャンバスに黒い正方形だけを描いた「黒の正方形」や白い正方形キャンバスの上に白い正方形を斜めに描いた「白の上の白」の作者マレーヴィチ「スプレムス38番」がありました。
ああ、かっこいい!
風景や静物、心情などを描くんじゃなくて純粋な抽象作品を描く作家。
それも1910年代に!進んでるな~。
マレーヴィチ以外の画家の絵も、写真も、ぜんぶとてもよかった。
ロシア・アヴァンギャルド、いいなあ。

ピカソとその周辺

ルードヴィヒ美術館はピカソのコレクションが充実しているそうです。
今回は大きな絵と陶器(皿)が展示されていました。
ピカソってやっぱりすごいなあとつくづく思いました。
なんでこんな形、こんな表現が出てくるのか。
なんでこんな色になるのか。
なんでなんでなんで?と思う。
今回は「アーティチョークを持つ女」がメインなのかと思いますが、「マンドリン、果物鉢、大理石の腕」というでっかい静物画が一番おもしろかった。
ひとつの画面の中にいろんなおもしろとおどろきが詰まっている。
絵画っておもしろい。
ピカソの絵のところだけ壁が深緑にしてあるのもよかった。
同じエリアにかかっているブラックの横長の絵「水差し、レモン、果物鉢」にも合っていて、ピカソに負けず劣らずの良い絵に見えました。
もともと良いから良いにきまってるか。

ヨーロッパからアメリカへ

第二次世界大戦でビッグな作家がアメリカに行き、美術の中心がヨーロッパからアメリカに移る頃の作品もたくさんありました。
ひさしぶりにスペインの画家、アントニ・タピエスの作品を見ました。
相変わらず前にたつと「壁」と思いましたが、作品タイトルは「バラ色のサインがある白77番」です。
なにが?
抽象表現主義の大家ポロックの(たぶん)珍しい白黒作品がありました。
書道っぽい抽象表現主義の作品、好きです。
美術の中心がアメリカになり、だんだん現代に近づいてきてポップアートの展示室に来た辺りで「もういいか」…って感じになってきました。(個人的な感想です)
作家がシニカルに描こうとどうしようと、ポップアートから60年以上経ってもいまだにエコだSDGsだと反省しつつも大量生産・消費しています。
すごい勢いで社会が変わっているけれど、楽を手放すことは難しいってことですね。
ポップアートの表現方法は、それこそめちゃくちゃ大量消費されて、いまだにこのタイプのイラストやパロディをよく見ます。
それも織り込み済みの作品だったんだろうか。

作品の写真撮影

硬派な?展覧会のイメージがあったので撮影可の作品があるとは思いませんでした。

カーチャノヴィツコヴァ 近似(ハシビロコウ)

わたしも写真を撮って帰ろうと思ったのですが、ハシビロコウの写真の前でポーズをとって撮影する大人のグループがいくつかあり、なかなか順番がまわってきませんでした。

ちょっと前に美術館の人が「SNSの撮影スポットとして美術館に来る人が増えている。作品は単なる背景になっている」とおっしゃっていました。
東京の美術館では撮影のための行列で作品がなかなか見られないこともあります。
SNS全盛の今は仕方のないことです。
このことを皮肉って作品にしてる人、ぜったいいますよね。
もしかしたら長蛇の列ができている作品って、このことを皮肉っているのかな?
うわ~。そうかもしれない。
もしかしたら、このハシビロコウの写真もそうなの?
うわ~。まんまとひっかかったわ。

SNSがないずっと昔からSNS全盛の現代までを堪能できる充実の展覧会でした。
もう一回ぐらい見に行きたいなー。

ルートヴィヒ美術館展
会期:2022.10.14(金)~2023.1.22(日)
開館:10:00~18:00(金曜日は20:00まで。入館は閉館30分前まで)
休館:月曜日(2022.12.26(月)と2023.1.9(月・祝)は開館)、年末年始(2022.12.29(木)~2023.1.3(火))
観覧料:一般 2000円、大学生 1100円、高校生 600円、中学生以下無料

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