【モノクローム 描くこと】@東京都渋谷公園通りギャラリー 純粋で迫力に満ちた作品がいっぱいの展覧会。

東京都渋谷公園通りギャラリー

予定外に寄ったギャラリーで圧倒されました。点・線・面が力いっぱい呼吸しておりました。

目次

東京都渋谷公園通りギャラリー

東京都渋谷公園通りギャラリーは、公園通りぞいの渋谷区立勤労福祉会館1階にあるギャラリーです。
共生社会の実現にむけて、アール・ブリュットなどの振興拠点として2020年にオープン。
行くたびに姿が変わる渋谷にある、珍しく落ち着いた場所です。
斜め向かいはキラキラした渋谷パルコ。

サインの矢印に従うと全然違う所に行ってしまう。

アール・ブリュット

アール・ブリュット(Art Brut)はフランスの画家ジャン・デビュッフェが提唱したことばです。
「美術の専門教育を受けていない人たちによる芸術」「既存の美術潮流に影響されない表現」などいろんな解釈がありますが、日本では「障がい者の表現」という部分にスポットがあたっています。
「渋谷公園通りギャラリー」だって福祉会館の中にあるしね。

ジャン・デビュッフェは精神障がい者の作品を多く持っていましたが、「純粋な創造性」「文化的処女性」を重視して作品を収集したら精神障がい者の作品が多く集まっただけなんだそうです。
アール・ブリュット、身近なところではEテレの「no art, no life」で良い作品をいっぱい紹介しています。

モノクローム 描くこと

この日は美術館に山下清展を見にゆくつもりでした。
80代の友人がとても好きなので、一緒に話ができたらいいなあと思って。
開館時間にSONPO美術館にゆくとガラス張りのロビー内は満杯で、チケットを買う人の行列が外まで続いています。
山下清って友人ぐらいの年代の人に大人気なのね。


山下 清: あるがままの自分に正直に生きよ (291;291) (別冊太陽 日本のこころ 291)

その中に混じる勇気がなく、おとなしく帰ることにしました。
けれど品川に向かって山手線に乗ったとたん、渋谷公園通りギャラリーに「モノクローム 描くこと」を見に行くことを思いつきました。

就労支援施設や障がい者支援施設、工房などで制作しておられる7人の作家さんのドローイング、版画、立体が展示されています。(故人もおられます)
ペン、木炭、墨汁などで描いた絵、針金で作られた立体、紙版ドライポイントなど、基本は白と黒によるモノクローム作品です。

大きい方の展示室に入ると強烈な絵が目に入ります。
岡元俊雄さんの、激しく動く線と飛沫で構成された墨汁による大きな人物画。
表面が光るぐらいに墨汁が厚塗りになったところはだいぶ重ねてあるのかな。
抽象画っぽく見えるものもあります。
「女の人」とか「男の人」とかいうタイトルがすがすがしい。
しっかりトラックを描いた初期作品もあります。
滋賀県の工房で制作しておられるそうです。
実際のところはわかりませんが、ぜんぜん邪念がなさそうに見えます。
心のままってかんじ。
制作風景の映像では、寝ころんだ状態で割り箸ペンに墨汁をつけて線を描いておられました。
いいな~。

タマネギを木炭で描いておられる吉川敏明さん(故人)の作品も強烈でした。
木炭って石膏デッサンをするときに使う難しい画材ってイメージですが、調子なんかなくて木炭で黒々と塗りこめた面がすばらしい。
木炭ってこんなふうに描ける画材だったのか。

気に入った楽譜を模写される西岡弘治さん。
絵本や漫画を模写する人がよくいますが、楽譜の模写は初めて見ました。
そのまま描きうつしてあるわけじゃなくて、五線も音符も記号も文字も自由に踊る独自の模写です。
こんなすてきな絵が出てくるなんて、うらやましいにも程がある。

ペンのインクがなくなるまで×を大量に描き続ける平瀬敏裕さん。
×が集まって面になり、その面で構成されます。
画面構成のセンス抜群で、どれもぜんぶ美しい。
インクが満タンのときは×が濃いけど、だんだんかすれて薄くなる。
「もの派」の作家 李 禹煥の「点より」「線より」と同じじゃないか!
「身振りの痕跡が残る筆勢を明らかにした」作品ってことでしょうか。すごい。

たぬきだshinさんは針金で乗り物や架空生物の立体作品を作っておられます。
繊細だけど力強いドローイングという感じ。
作品はもちろんですが展示もよくて、台に敷かれたグレーの紙の上に作品の影が美しく映るのです。
溜息でますわ~。

よけいなものが何もないシンプルな展覧会、すばらしかったです!これが無料だなんて、太っ腹です。
山下清(そういえば、彼もアール・ブリュットの作家ですね)展が混んでてよかった。
ありがとう!

モノクローム 描くこと
場所:東京都渋谷公園通りギャラリー展示室1、2 (東京都渋谷区神南1-19-8)
会期:2023年7月22日(土)~9月24日(日)
時間:11:00~19:00
休館:月曜日(9月18日除く)、9月19日(火)
入場無料
展覧会の図録も無料ですが、まだできていませんでした。
きたらその旨HPにアップされるそうです。

アノニマス・ポートレイト―レシピで作るモンタージュ!!

ビル入口の交流スペースで開催されているイベント。
用意されたホワイトボードにポートレイトを描いたら展示してもらえます。
福笑いみたいに輪郭や顔の部品が用意されたもので作ることもできるし、最初から自分で描くこともできます。
観覧者がわたしだけだったのでスタッフの方が「作ってみられませんか?」とお勧めくださいました。
坊主頭の輪郭にホワイトボードマーカーで描くことにしました。
落書きみたいに描いて、仕上がったらスタッフの方が壁にかけて写真を撮らせてくださいます。
涼しいところでたのしい休憩になりました。

なんの考えもないポートレイト。

渋谷パルコ

30年ぶりに渋谷パルコにゆきました。
浦島太郎です。
ふらふら見て歩いていると、博多キャナルシティで混んでて入れなかった天ぷら屋さんがあったのでそこでお昼にしました。
カウンターに通されて、QRコードで注文するタイプ。
隣で制服姿の男子高校生が二人、女の子の話をしています。
こんな店で高校生がお昼ごはんたべるのか。
追加注文をして「これだけたべてもまだ四千○○円って、安いよね」って言ってる。
なんてリッチな高校生!

涼しいギャラリーですばらしい作品をみて、きれいなお店を見て、ゴミのにおいがする灼熱の渋谷センター街を抜けて帰りました。
充実の東京2DAYSでありました。

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