【小林正和とその時代―ファイバーアート、その向こうへ】@京都国立近代美術館 1本の糸がこんなことになってゆくとは。

小林正和とその時代
小林正和 KAZAOTO-87

ファイバーアート作家小林正和さんの回顧展。ご本人とその関係者(作家)の作品が展示されています。

目次

ファイバーアート

1960年代欧米ではじまった糸をつかった作品群。
糸を紡いで織って…の糸の種類、織り込むものの素材、織り方などなどが多様化し、平面だけでなく立体になり、空間を作っていく。
美術大学なら染織科の学生がこのタイプの作品を作っていることが多い。
小林さんは日本におけるこの分野でのパイオニア。
京都芸大漆工卒業後、川島織物に就職して糸と出会われたそうです。
糸は漆よりフレキシブルでいろんな可能性があって楽しそう。(個人の感想です)

小林正和とその時代―ファイバーアート、その向こうへ

色々な表情を見せる糸が素材となった作品で展示室が構成されています。
糸が自分の重さで垂れた状態が作品に活かされていたり、その性質をコントロールして緩めたり張ったり。
一本の糸を線としたら線→面→立体→空間全体と、影響が及ぶ範囲が広がってゆきます。
さらに糸一本ずつに光があたることで表情が変化し、素材はシンプルなのに起こっている現象は複雑です。

小林正和とその時代

ぐぐっと規模の小さい話ですが、ガーゼハンカチやジャガードタオルは経糸と緯糸のことを考えながらデザインします。
仕事で向き合うといつも身近にある布製品は全て細い糸からできていることを意識します。
そんな身近なものと同じ原理でこんなすごい作品ができて、展示室の空間が構成されているという点にも感動があります。

MIZUOTO―99(水音―99)は真ん中あたりに金属パイプを通したレーヨンの糸が天井から垂らしてあるとても大きな作品。
横を通るとタイトル通り水の流れる音がきこえるような。
光のかげんで水の如く動いてるようにも見える。

小林正和とその時代
小林正和 MIZUOTO―99(部分) 床に映る糸も作品の一部みたい。

YUMIOTO―B93は緊張と緩和が半端ない作品。
垂れた糸も凛としてシュッ。

小林正和とその時代
小林正和 YUMIOTO―B93

熊井恭子さんのスクリーンは経糸、緯糸ともにステンレススティールだそうです。
縦に3mもある長い作品なのですが、見る場所によって光り方が違うので一時も同じ表情にならない。
厳密にいえば何でもそうなんだけど、これは金属糸のタペストリーだからよりその感が強い。
面白くて作品の前で前進したり後退したりウロウロしてしまった。

小林正和とその時代
熊井恭子 スクリーン(部分)

展示室はどこも空いているのであちこち行ったり来たりしながら堪能できます。
とてもいい展覧会でした。

美術館であまり見ることのない光景を見ました。
はじめて美術館に入ったような雰囲気のおじさん二人。
大声でなんやかんやとしゃべって、感心して作品に手を触れる。
監視員の方に緊張感が走り、皆さん身構えられたのがわかりました。
大声を出さないように、作品に触れないように、たんびに注意しておられました。
おじさんたちの行動はもちろんマナー違反ですが、
これが新しい世界に触れて感動したときの反応かもね、と思ったのでした。

開館60周年記念 小林正和とその時代―ファイバーアート、その向こうへ

会場:京都国立近代美術館
会期:2024年1月6日~3月10日
開館時間:10:00〜18:00(金〜20:00) ※入館は閉館の30分前まで 月曜休
料金:一般 1200円 / 大学生 500円 / 高校生以下無料

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