【ミニマル/コンセプチュアル ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960ー70年代美術】兵庫県立美術館にて。展覧会は面白いし、美術館海側テラスは気持ちいいし!

美かえる(ミカエル)がお出迎え

「ミニマル/コンセプチュアル ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術」がDIC川村記念美術館(千葉)、愛知県美術館を巡回して、最後の兵庫県立美術館で開催中です。

目次

Minimal art、Conceptual artとドロテ&コンラート・フィッシャー

ミニマル・アートは作家の表現性を捨てて幾何学的な形の作品を制作したり、既成の工業製品をそのまま作品にする美術の動き。
コンセプチュアル・アートは制作物そのものより、コンセプトが重要だと考える美術の動き。

ドロテ&コンラート・フィッシャー夫妻は1967年にデュッセルドルフにギャラリーを開き、当時最先端の動向であるミニマルアート、コンセプチュアルアートの作品を紹介しました。
作家が完成作品をギャラリーに搬入して展示するのではなく、現地で制作・展示する、
作家が送った指示書に基づいて技術者が制作する
というスタイルも可能な新しいタイプのギャラリーでした。
本人不在で指示書に基づいて他人が制作するなんて、まさに「実際手を動かす」ことより「コンセプト」が大切だということがよくわかります。

今はこういうスタイルの展覧会は普通ですが、当時はめちゃくちゃ新しかったんじゃないの?
とっくに終わった過去の話なのにワクワクするのでした。

ミニマル/コンセプチュアル ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術

全面的に写真撮影禁止なので、ゆっくり見ることができました。
宣伝効果はぐっと落ちますが、鑑賞環境を考えるとこれが正解だと思います。

この展覧会は、ドロテ&コンラート・フィッシャーのギャラリーで行われた展覧会の資料、記録、コレクションを収蔵しているノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館の協力で開催されたものでした。
HPを見ると、このドイツの美術館かっこいい。
この間までエスパス ルイヴィトンで展覧会があったリヒターや国立国際美術館で1月までやっていたパレルモの作品も、流れでわかりやすく紹介されておりました。

ブリンキー・パレルモ

1977年に34歳で亡くなってしまったドイツの作家。
ピンボールマシーン側面のチェッカー柄を版画(シルクスクリーン)作品にしたり、
買ってきた布の配色だけ決めて友人に縫い合わせてもらって枠に張る「布絵画」を作ったり、
自分のアパートの階段を縮尺そのままにギャラリー壁に転写したり…いろんな楽しい作品を作っていた人です。
研究者が「気づくとそこから認識がかわる、無いようで有る『息』のような芸術」とおっしゃっていました。

濃グレーベタ塗のいびつな楕円形キャンバス(B5ぐらいの大きさ)が壁の高いところに展示されていました。
色が濃いだけにがっつりな塊なのですが、兵庫県立美術館の展示室が軽くやわらかな空間に感じられ、作品とそれが置かれる場所の関係って強い!と思わされました。

ゲルハルト・リヒター

フォトペインティング作品が展示されていました。
白黒の人物の肖像写真をぼかして模写したような。
さらにその上から雪のように白く点(というより大きいかな)を降らせたイラっとする作品。
今回はありませんでしたが、実際の写真でも上に塗料をかけてイラっとさせられます。
見る機会が多い作家ですが、ありとあらゆるタイプの作品があります。
圧倒的力量で常に挑戦するすごい作家!

ロバート・ライマン

真っ白の正方形が基本。
作品の展示に使ったマスキングテープも作品の一部だったりします。
こういうのはうれしい。


2メートル四方のキャンバスが真っ白に塗ってある「君主」という作品があります。
側面がガンタッカー(ホッチキスがでかくなったもの)でまあまあ雑に止めてあり、それも面白い。
「君主」の側面が雑。
学校ではキャンバスやパネルの側面を雑に仕上げると先生に注意されます。

河原 温(かわはら おん)

河原 温はコンセプチュアル・アートの世界的な第一人者。
1966年から亡くなる前年の2013年まで毎日、日付をキャンバスに描く「日付絵画」を制作しておられました。
黒地に「May29,1971」と白で描いてあるような。(黒・白とはかぎらない)
スペインにいたらスペイン語で、フランスにいたらフランス語で。
額なしの展示で、作品を収納する箱にはその日の新聞が貼り付けてあります。
新聞ってほんとうに素敵な紙製品です。

そのほか「I GOT UP AT 8.01 A.M」のように毎日起きた時間をスタンプしてコンラート・フィッシャーに送った絵ハガキや、
「I AM STILL ALIVE ON KAWARA」と打ち込んだ電報を送ったものも展示されていました。
公の場に姿を見せない、というのも表現の一部で、1966年以降は写真も公表していないそうです。
生き方まるごとが作品ですね。

リチャード・ロング

リチャード・ロングはイギリスのランドアートの作家です。
「歩行による線」という写真が展示されていました。
草地の同じ場所を繰り返し歩いて草を踏み倒し、そこにできた線を撮影したものです。
線は造形の基本要素ですが、「手で描く」だけでなく「歩いて作る」こともできるのね。
リチャード・ロングは丸太を並べたもの、小石を同心円状に並べたものなど、素材自体には手を加えていない作品がたくさんあります。
わたしたちの日常は芸術だらけです。

各会場のポスター

3会場巡回していますが、それぞれのポスターが全然違っておもしろい。
それはこの展覧会に限りませんが、同じ趣旨の展覧会でも、それぞれの美術館の捉え方があるんだなあ、と興味深いです。

兵庫県立美術館のお楽しみ

裏側がすぐ海なのでお天気がいいとほんとうに気持ちいい。


光も風もぜんぶありがたく感じます。
帰るとき、美術館のうす暗いエントランススペースから正面に見える明るい中学校が印象的です。
木々と山の緑が美しい。


クラブ活動中のこどもたちの声も聞こえます。
世界が平和でありますようにと思わずにはいられません。

会期   2022.3.26(土)~5.29(日)月休
開館時間 10:00~18:00(入場は17:30まで)
料金   一般1600円、大学生1200円、高校生以下無料、70歳以上800円、障がいがある方一般400円、障がいがある方大学生100円

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