【NHK俳句】中村草田男の「万緑」は、鏑木清方の作品とイメージが重なります。

鏑木清方展の看板 左から浜町河岸、築地明石町、新富町

日曜日の朝放送している「NHK俳句」で、中村草田男とその俳句を紹介していました。
京都国立近代美術館で開催中の鏑木清方の風俗画とイメージが重なって、面白さ倍増です。

目次

NHK俳句

NHK俳句は日曜日午前6:00からEテレで放送しています。
テレビ体操の前に家事をしながらちらちら、おもしろかったら立ち止まるぐらいの感じで見ています。
先日は「玉藻」主宰 星野高士先生の「会いたい俳人、12人」で中村草田男を紹介していました。
兼題は「万緑」でした。
「万緑」は中村草田男きっかけで夏の季語になった言葉だそうです。
1000年近く前の北宋の政治家 王安石の詩の中にある
「萬緑叢中紅一点(ばんりょくそうちゅうこういってん)」からとった言葉。
中村草田男は、句集や主宰誌タイトルも「萬緑」としておられました。

萬緑の中や吾子の歯生え初むる  草田男

ご本人が句を朗読・解説される声が放送されました。(1955年の声。既に故人です)
たくさんの新しい緑と、新しい小さな白が目に浮かぶ、色鮮やかでうれしい句です。
…なんて、チラ見しているだけの私に詳しいことは全くわからないけど。
同時に、とても有名な句も朗読・解説されていました。

降る雪や明治は遠くなりにけり  草田男

1931年(昭和6年)、母校の小学校で(当時の)今どきの小学生を見かけます。
どんどんどんどん雪が降っているのを見ていると時間の観念が消えて、今が昔か昔が今かわからなくなる。
けれど、小学生を見ると自分が小学生だった明治時代とは全然かわってしまっている。
「日本人にとって意味のあった懐かしい明治時代は遠くに過ぎ去った」とはっきり意識した、
という句だそうです。
中村草田男は1901年(明治34年)生まれ。
子ども時代を生きた明治が大好きだったんですね。
明治時代が大好きといえば…

鏑木清方の風俗画

ただいま京都国立近代美術館で没後50年の大規模回顧展をしています。
1878年(明治11年)東京生まれの、生粋の明治東京人。
長らく行方不明だった美人画最高峰「築地明石町」と、「浜町河岸」「新富町」の3点が展覧会の目玉作品です。
「美人画」の大家というイメージですが、明治情報満載の「風俗画」がお得意なんじゃないかと思わされる展覧会でした。
文学(とくに樋口一葉が好きそう)、お芝居、歌舞伎、落語を題材にした絵。
魚売りのこどもから魚を買うおかみさんの姿、お芋やさんの店先などなど、生活を細かく描いた絵。
昭和や大正に描いた絵も、ほぼ古き良き明治を描いたものでした。

緑に囲まれた看板 たけくらべの美登利(みどり)

「明治風俗十二か月」は、明治30年ごろの中流階級の生活ぶりが描かれた掛け軸。
昭和10年に三越デパートの個展で展示された月次風俗画です。
1月「かるた」かるたを片付けている?女性と、その後ろで羽根つきをする少女。
2月「梅屋敷」黒い和装コートを着た婦人の後ろに梅の木
3月「稽古」三味線を弾くお師匠さんと唄のお稽古をする少女
…というように、その月に合ったテーマの12作品。
最後の12月「夜の雪」は、雪の夜人力車に乗る婦人にひざ掛けをかける車夫、横にガス灯が見えます。
(これから出発だと思ったけれど、降りるところかもしれません)
観覧者が個展でこの絵を見ているのは昭和10年。
ホントに「降る雪や明治は遠くなりにけり」だと思った人がいたかもしれません。


鏑木清方: 市井に生きたまなざし (298;298) (別冊太陽 日本のこころ 298)

鏑木清方の「緑」

展覧会を見て印象的だったのは緑色の美しさです。
緑青色や納戸色のような青っぽい緑。

左:納戸(なんど)色 右:緑青(ろくしょう)色

この青っぽい緑と墨の組み合わせが美しい絵が多数ありました。
主役の着物が緑青色だったり、袖の中にちらっと見える襦袢や裁縫中の布といった脇役が納戸色だったり。
この印象的な緑のがわたしの中では「万緑」と重なりました。
鏑木清方の絵に風景画はあまりないので、木々の「万緑」とはまた違うんですけど。

まったく関係のない日本画作品と俳句作品。
「古き良き明治」と「緑色」のイメージが重なって、おもしろいなあ!と思ったのでありました。

※俳句はすべてNHK俳句テキスト2022年6月号 29ページから引用しました。

鏑木清方展
会場:京都国立近代美術館
会期:2022年5/27(金)~7/10(日)会期中展示替えあり
時間:9:30~18:00(金曜日は20:00まで。入館は閉館30分前まで)
休館:月曜日
観覧料:一般1800円、大学生1100円、高校生600円、中学生以下無料


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