藤田嗣治×国吉康雄@兵庫県立美術館

同時期にフランス、アメリカに渡って活躍したふたりの画家の展覧会。

目次

藤田嗣治×国吉康雄 二人のパラレル・キャリア ―百年目の再会

藤田嗣治×国吉康雄 二人のパラレル・キャリア ―百年目の再会兵庫県立美術館で開催中の特別展。

東京美術学校卒業後26歳でフランスに渡った藤田嗣治。
16歳で労働移民としてアメリカに渡り、働きながら美術学校で学んだ国吉康雄。
1~9章にわけて、移住者である二人がそれぞれ同じ時代にフランスとアメリカでどんな活動をしていたか、その後どうなっていったのか、作品を通じて知る興味深い展覧会です。
二人はアメリカで直接交流したこともあるが親交が深まることがなかった様子もわかります。

最初から最後まで、生まれた環境も育ちも作品に対する考え方もぜ~~んぜん違うんだろうな、というそれぞれの絵が並んでいました。
わたしは入口から出口までずっと「二人の作品を別々で見たかったな」と思っていました。
一緒に並べなかったらこの特別展企画が全然成り立たないので「じゃあ見に来るな!」なんですけどね。
藤田嗣治の作品は鑑賞者に見せるための企画ががっつり練ってあり、とても垢ぬけていて今でいえば村上隆みたいです。
絶頂期?の乳白色裸婦スタイル時代の作品なんかとくに。
国吉康雄は自分メインで描いている、芸術家の王道をいく素朴な作品。
(ぜんぶわたしの勝手な感想です)
どちらの作品もとても良いんです!が、とくに国吉作品を見るとき藤田作品の余韻が激しく邪魔になりました。
ということで別々で見たかったなぁと思ったのでした。
この展覧会を見たからそれがわかったんだし、やっぱり見てよかったのですが。

軍国主義化する日本に戻った藤田嗣治が南米や沖縄で描いた絵はパリで描いていたのと違って比較的企画色が薄くて迫力があります。
国吉康雄がずっとアメリカで着々と制作している、その姿勢がかっこいい。
そのころの作品「逆さのテーブルとマスク」の解説によると、ニューヨーク近代美術館はピカソの習作を買うためにこの絵を手放したそうです。
何かを手放して何かを手に入れるのはふつうのことなんだけど、少しショックなエピソードです。

第二次世界大戦中、藤田嗣治は髪型をおかっぱ→丸坊主にして日本で戦争画を制作します。
国吉康雄は「適性外国人」になりながらもアメリカで制作を続けます。
当時のそれぞれの自画像が並べて展示されていました。
それぞれのプロパガンダ戦争画も展示されています。
アメリカを敵国とした藤田作品と、軍国主義日本を敵とした国吉作品です。
戦争中の国吉作品を初めて見ました。
どんな状況でどんな気持ちで制作していたのか、残虐な日本人像を描いたものもありました。
戦争中の藤田作品は有名な迫力満点のものではなく、おとなしめのものが展示されていました。
国吉作品とのバランスを考えたんですかね。

戦後藤田嗣治は戦争画による責任を問われ、フランス国籍を取得し、カトリックの洗礼をうけて二度と日本に帰ることなく亡くなります。
礼拝堂も作ってましたよね……最後まで作品の企画がしっかりしたすごい人です。
国吉康雄はアメリカで制作を続け、アメリカ国籍取得手続き中に亡くなります。
国籍はなくても完全にアメリカで評価され確固たる地位を築いたアメリカの作家です。
すごい人です。

国吉康雄 舞踏会へ(1950)
国吉康雄 曲芸師(1951)

藤田嗣治 姉妹(1950)
藤田嗣治 室内(1950)

作品以外のことを考えてしまう展覧会でした。
社会の流れと芸術は切り離せないのね。
切り離せるもの(こと)なんか何もないか。

やのべけんじ Sun Sister(なぎさ) (2015) 

藤田嗣治×国吉康雄 二人のパラレル・キャリア ―百年目の再会

会場:兵庫県立美術館
会期:2025.6.14(土)~8.17(日)
休館:月曜日(祝日は開館、翌火曜日が休館)
時間:10:00~18:00

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