京都市京セラ美術館 東山キューブで開催されている村上隆さんの個展に圧倒されました。
村上 隆
世界で活躍しておられる日本現代美術界のトップランナー。
「スーパーフラット」は大学で日本画を学び、アニメやマンガのオタクでもある村上さんが展開する美術概念です。
階層がない比較的フラットな現代の日本。
西洋画のように遠近法を使ったり陰影をつけてリアルに描くのではなく、ごく平面的に描かれた日本の伝統絵画。
伝統絵画と同じく平面的なマンガやアニメという日本を代表するポップカルチャー。
ポップカルチャーがハイカルチャーになった村上さんの作品。
狩野派のように作品を工房で大量生産して商業的にも成功しておられます。
ポップカルチャーの中に根付いている村上さんの作品は日常生活でなじみ深い。
村上キャラクターのTシャツ、マスコットなど電車の中でよく見かけます。
そんな日常もありながら今回の展覧会を見て、こんな人が同世代・同時代にいるってホントにすごい!とつくづく思ったのでした。
Casa BRUTUS(カーサ ブルータス) 2024年 04月号[村上隆と京都]
村上隆 もののけ 京都
京都市京セラ美術館で開催されている、京都ならではの古典を村上さん流に変換した作品から村上さんの最新トレンド作品までが並ぶ大きな展覧会です。
東山キューブ入口に金銀市松ベースに桜の大きな絵。
その前にはお寺の門みたいに阿像・吽像がたっています。
最初の展示室に入ると17世紀の「洛中洛外図屏風(舟木本)」を村上さん流に描いた大きな「洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip」が圧倒的迫力で迫ってきます。
町の中にはおなじみのキャラクターや、今回新しく登場したキャラクターもいます。
全面に漂う雲にはドクロ模様がぎっしりはいっていて、金箔仕上げ。
洛中洛外図のお向かいにある絵は雲部分にドクロだけじゃなくおなじみのお花もぎっしりでした。
他にも村上さん流に変換した日本美術の立体、絵画が数点。
床には琳派風の水の紋様がハデな色で施されています。
ドクロ柄黒カーテンで仕切られた次の空間は四方(東西南北)に青龍、白虎、朱雀、玄武を配した暗い部屋。
展示室の真ん中に金ぴかのドクロが光る六角螺旋堂。
各作品が大きいし、描かれているものが強烈なのでここもすごい迫力です。
暗い展示室を出ると村上さんといえば…なマンガ、アニメ、フィギュア…の世界。
DOBくんの前にスマホ掲げた人(撮影してる)が群がっていて異様でした。
続いて風神雷神をはじめとした有名日本絵画を村上変換した作品が次々現れます。
風神雷神のゆるいこと。
雷神は故・坂田利夫師匠にみえますが…あ~りが~とさ~ん。
尾形光琳の立葵が村上さんのいつものお花になって、展覧会のメインビジュアルになっています。
曽我蕭白「雲龍図」は赤い絵「雲竜赤変図」になり、工房で作っておられる村上さんには珍しいご本人の手によるもの。
めちゃくちゃでかい。
めちゃくちゃ部分しか撮影できなかった。
「ライオンと村上隆」というきらびやかで大きな絵は、重要なお得意様からのご依頼どおりに作ったというもの。
自分がいいと思ってるわけじゃないけど…というイラストレーター的作品。
この展覧会の65%は「描きたくないけど頼まれたから描いた」絵なんだそうです。
今回の展覧会は裏事情が各所で全部ご本人の似顔絵+ふきだしの作品によって吐露されています。
文字の色が全部変えてあってすごく読みづらいけど、面白くて読まずにはいられない。
雪舟の「慧可断臂図」の村上流がこわい。
達磨に弟子入りしたすぎて慧可が切り落とした腕だけ…
そして村上さんの最新トレンド紹介。
ゲームつくらなければ…とかなんとかふきだしにカラフル文字で語られていました。
デジタル作品を手作業で絵画にした超絶技巧作品が展示されていたり。
展覧会の資金集めのためのふるさと納税返礼品、トレーディングカードを絵画作品にしたものが108点びっしり並んでいました。
このあたりは写真撮影の人でいっぱい。
最後の展示室は金箔をはったようなきんきらな壁に、ベタに京都にちなんだ作品が展示されていました。
舞妓さん、歌舞伎、五山の送り火。
もののけフラワー親子、そしてラッパーダンサーのJP WAVYと共作した主題歌の歌詞なども。
Cho Wavy De Gomenne (Remix) [feat. SALU] [Explicit]
好きな作品はひとつもなかったし、とりあげているポップカルチャーには興味がないんだけど、ものすご~~く面白い展覧会でした。
もうひとつ、あまり表立って作家が口にすることがない経済事情について、村上さんがはっきり斬りこんで行動を起こされた事もこの展覧会のすごいところ!
公立美術館は予算がとても少ない。
主催者提示金額は村上さんが思っている額の半分だったそうです。
そのため海外コレクター所蔵の、自身の主要作品を借りることができない。
国内で新作を作るしかない。(え?!)
ということで90%が新作になってしまったんだそうです。(ええっ!)
あまりに時間がなくて洛中洛外図は未完成であることをふきだしで語っておられました。
お金は自分で用意するしかない。
時間がない中ふるさと納税について勉強し、返礼品を制作し、その資金を活用して京都市内の学生が無料で観覧できるようにされました。
ふるさと納税を利用して文化事業を推進する例を作られたことで、今後の公立美術館での展覧会がかわるだろうと言っておられます。
「もののけ 京都」は作品だけでなく、展覧会の運営までも丸ごと大きな展覧会した。
会場 京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ
会期 2024年2月3日(土)〜2024年9月1日(日)
時間 10:00~18:00(最終入場は17:30まで)
休館日 月曜日(祝日の場合は開館)
料金 一般2,200円、⼤学・専門学校生1,500円、高校生1,000 円、中学生以下無料、京都市在住の学生もしくは京都市内の学校に通学している学生は入場料無料
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