KBS Worldは韓国の放送局KBSの国際向け放送。
「屋根部屋の問題児たち(옥탑방의 문제아들)」は、韓国映画やドラマでおなじみ屋上の家で、芸人さんたちがおしゃべりしながらクイズに解答する平和なバラエティ番組です。
クイズバラエティ~屋根部屋の問題児たち(옥탑방의 문제아들)
我が家は住宅街の中でポツンとTVの映らない地域で、集合住宅まるごとケーブルテレビを利用しています。
「屋根部屋の問題児たち(옥탑방의 문제아들)」は、たくさんあるチャンネルのひとつKBS Worldで、本国より5か月遅れで放送されているクイズバラエティ番組です。
レギュラー解答者 ボケ担当最年長キム・ヨンマンさん、知性派ソン・ウニさん、知性派チョン・ヒョンドンさん、おとぼけキム・スクさんの4人は芸人さん。
そして天然の最年少ミン・ギョンフンさんはBUZZのボーカル…といっても知らないバンドですが。
Buzz Effect
画面に出てきませんが、出題者は「ダミ声PD」と呼ばれているシブい声の方です。
ホスト5人と週替りゲストが楽しくおしゃべりしながら集団的知性でクイズに解答する笑いあり涙ありの平和な番組。
ゲストは芸能人、予備校講師、各種評論家、医者、大統領候補までありとあらゆる人です。
先日のゲストは新年1発目ということで現代韓国最高の抒情詩人、ナ・テジュさんでした。
とても有名な方のようですが、淡々とお話される地味なおじいさんです。
詩を描く抒情詩人 ナ・テジュさん
朝、家事をしながらちらちら見ているNHKのTV韓国語講座は、20年前には「詩のコーナー」がありました。
韓国人には詩がとても身近で、読むことも作詩も日常的、詩や詩集を贈り合うことが当たり前だと紹介されていました。
そんな韓国でもいつの間にかみんな忙しくなって詩を必要としなくなっていたそうです。
現在コロナ禍で孤独、憂鬱を抱えて詩に慰めを求め、また詩を必要としはじめたとのこと。
ナ・テジュさんによると「詩は苦しみの中から生まれる」とのことで、26歳当時恋が実らず詩を書き始めたそうです。
あの人ひとりが この世のすべてだった頃
そのときにつくった「竹やぶの下で」という詩をご本人が詠まれ、
「この詩が僕を詩人にしました。ひとりの女性に捨てられて詩人になり、ひとりの女性に選ばれた瞬間夫になりました」とおっしゃいました。
以来52年、難解なことばを使わず四千編の詩を作られます。
詩を書く時は時間をかけて思慮を重ね、電光石火のスピードでスマホで書くそうです。(スマホで書いて、すぐ消すそうです…もったいない)
多い時には1日20編作る事があるが、そういう詩は水っぽい。
「水っぽい」なんて、字幕の日本語訳でもさすが詩人の言葉の選択はおもしろい。
詩権在民
1980年に出版した「幕洞里(マクトンリ)素描」という詩集の中の一編を誰かがアレンジしてSNSにUPしており、それを見つけたテジュさんは、さらにその詩をアレンジして本に載せたそうです。
「(SNSにアップした人は)著作権侵害になりますね」とヨンマンさんがいうと、
テジュさんは「詩は人々のためにあるんです」とおっしゃいました。
盛んにおしゃべりしながらクイズ解答していたみんながし~んとなりました。
「我々民族が使ってきた言葉や情緒を借りて僕が書いたものだから、また民族に返すんです」と。
歌手のギョンフンさんが「僕が歌詞に引用するのはどうですか?」と質問すると、
テジュさんは「断る理由がない」とおっしゃいました。
詩の権利は読者にある。
詩は発明ではなく、世の中に存在するものから何かを発見して作られる。
みつけたものを隠し持っていたら意味がない。分かち合うから価値があり、それが善の循環のはじまりだと。
なんと柔らかく広く受け入れられる方なんだろう。
著作権を心配しなくていいってことで、ギョンフンさんの次回作に期待です。
…わたしはギョンフンさんの今までの曲もナ・テジュさんの詩も知らないんだった!
草花(풀꽃)
書店の屋外広告に使われているナ・テジュさんの詩(番組の字幕から引用)
草花
じっくり見れば可愛い
ずっと見れば愛らしい
君もそうだ
小学校教師をしていたとき、言う事を聞かない子どもたちを叱りながら作った、子どもを理解できない自分への詩だそうです。
逆で考えるんですって。
じっくり見なければ可愛くないし、少し見ただけでは愛らしくもなんともない。
マイナスな気持ちの自分を勇気づけるとき、自分をじっくり見るのだそうです。
じっくり見れば可愛くなる。
ピンチのときは焦らず急がず時間をかけることが必要なんですね。
日本で人気の読書会についてのクイズ
珍しく、日本関連クイズが出題されました。
参加者は全員本を読んだ前提で行われる読書会で、本に関する発言は否定してはいけない
想像力が必要なこの読書会の正体とは?という問題でした。
ウニ:読んでないけど読んだテイで行う…不正解
ギョンフン:半分まで読んで、結末をみんなで推理する…不正解
ヒョンドン:目次だけ読む!…不正解 あらすじだけ読む!…不正解
ウニ、ギョンフン:読んだ人と読んでいない人がいて、誰が読んでいないか当てるゲーム的なものなら面白いね。…不正解
スク:架空の本について語り合う!…正解。正しくは「架空の読書会」です。
皆が口々に答えるのをテジュさんはニコニコとみておられました。
ひとりがタイトルを言って「読みましたね」という呼びかけとともに会がはじまります。
全員想像力を総動員して、本のジャンル、表紙デザイン、内容まで自由に話す。
「否定なし」ルールなので全て受け入れなければなりません。おもしろそう!
コメディアンにピッタリだと言って、みんなで「スーパーマンと鉄人」という本の読書会がはじまりました。
しかしはやめに挫折。凡人にはむずかしいそうです。
ナ・テジュさんはみんなが実在しないものを懸命に話す姿にうっとりしたそうです。
架空の読書会。
知ってるものしか見えない。
知らないから感じる、知らなければその分感じようとする。
詩を読んで、よくわからない時ほど想像が広がる。
「知らないと委縮する」という意見もあるが、それも貴重なひとつの感情である。
全てOK、広く受け入れるところは美術との向き合い方とおなじです。
愛しているから自然に湧く
ヨンマンさんが「詩四千編もの発想はどこから?」ともう一度質問されました。
テジュさんは「사랑하니까(愛しているから)」と答えられました。
白い雲、花、とくに人を愛しているから。
愛すれば見え方が変わる。人が花にも雲にも水や山にも見える。それが愛です。とのこと。
愛だけが残る
文字にすると何もかもベタな感じですが、テジュさんが淡々とお話されると字幕で読んでも説得力がありました。
韓国語がわかればきっと暗唱された詩も、淡々とした雑談も、字幕より何倍も味わい深いことでしょう。
わからないのが残念でなりませんでした。
5か月遅れの新春スペシャルゲスト、充実の옥탑방でした。
クイズバラエティ~屋根部屋の問題児たち(옥탑방의 문제아들)
金曜日 7:35~8:35(朝) 再放送月曜日 5:00~6:00(朝)
※韓国のHPを見ると、出演者がキム・ヨンマンさんからキム・ジョングクさんにかわっていました。
※日本での放送は2023年に終了(ショックでした!)し、2024年に本国での放送も終了したそうです。
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