作家の津村さんと店主の中川さんによる対談は「水車小屋のネネ」についてだけでなく、音楽、読書、おいしいもの、地域スポーツと幅広くたっぷりたのしい。
スタンダードブックストア
スタンダードブックストアは梅田NU茶屋町、アメリカ村、あべのにあったセレクトがすてきな本屋さん。
雑貨もカフェもあり、好きなお店でしたが相次いで閉店されました。
なくなったものと思っていたら移転していたそうで、夫が行ってきたと言います。
天王寺駅から谷町筋を北に徒歩5分以内、1階はカフェで2階が本屋さんだという。
HPを見てみるとなんと!2日後に津村記久子さんの「水車小屋のネネ」刊行記念トークライブがあるじゃないか。
さすがにもうチケットないだろうと思って電話してみたらまだあったので予約。
ラッキー。
移転後はじめて行くスタンダードブックストアはファッションビルに入っていた時とは違う素朴な手作り感?のある本屋さんでした。
※スタンダードブックストアさんは2023年6月11日で天王寺のお店を閉店されました。
中川さんは「必ず復活しますので!」とおっしゃっています。待っていましょう。
「水車小屋のネネ」刊行記念 津村記久子×中川和彦トーク
津村さんのトークライブを聞くのは3回目。
「大阪的」が出た時、共著のMEETS元編集長・江弘毅さんとの対談。
大阪的
「この世にたやすい仕事はない」が出た時、「間取りと妄想」著者・大竹昭子さんとの対談。
どちらもだいぶ前ですが、とてもおもしろかったので今回もわくわくして参加しました。
津村さんは時間がとまっているように毎回同じ姿で登場されます。
飾り気がなく、誰にも盗まれないものが中にぎっしりつまっているんだろうなぁって感じでとてもかっこいい。
「水車小屋のネネ」について
新聞連載は1年間で、750枚の原稿。
今までで一番長く、苦労した小説だそうです。
コロナ禍で家にこもって執筆するだけなので飽きないように好きなものを書くことにしたとか。
「ヨウムが欲しい」「お姉さんが欲しい」「水車小屋が欲しい」
その結果ヨウムのネネ、お姉さんの理佐、蕎麦粉を挽く水車小屋が出てくる小説になりました。
執筆は孤独な作業ですが、校閲のサカモトさんが感想を言ってくださるのが励みとなって続けられたとのこと。
本当は1981年~2011年の物語にするつもりだったが、サカモトさんに「現代までいくんですか?」と言われたので10年プラスして2021年までにしたそうです。
小説の登場人物でいちばん重要なのは姉の理佐が高校時代バイトしていた文具の倉庫の同僚「光田さん」だそうです。
理佐が家を出るにあたって独立するには何が必要かということを教えてくれる人。(職安で職探しをするとか住居についてなど)
たしかに!登場回数は少ないものの、光田さんがいなければ小説は成立しません。
この物語に出てくる人はみんな親切です。
丸抱えする親切ではなく、片手間に親切。
みんなが少しづつ親切であれば人は救われるんじゃないか。
そのとおりだと思うし、そうありたいです。
「水車小屋のネネ」の舞台
舞台は木曽路。
お蕎麦屋さんは木曽福島、ぶどう農家は塩尻がモデルだそうです。
具体的な地名をきくと小説のイメージがより明確になります。
木曽ってことは、物語を覆っている緑色はわたしが想像していたより爽やかめかもしれない…と思ったりしました。
詳しいわけじゃないから、自分が行ったときのイメージだけど。
水車は関西にもちょこちょこ存在するらしい。
小説の中ではお蕎麦屋さん閉店後、製薬会社が水車小屋を借りて薬を作ります。
東大阪の辻小谷(ズシダニ)に、製薬会社が薬を作っていた水車があるそうです。
嵐山・渡月橋の街灯の電力も小さな水車によるとか。
知れば知るほど津村さんは水車が欲しくなるそうです。
音楽の話
津村さんの小説にはいろいろな音楽が出てきます。
今回珍しくクラシック音楽が出てきました。
ただいまシューベルトの出てくる小説を執筆中だそうです。楽しみ。
水車小屋のネネにも様々なジャンルの音楽が。
ネネの好きなプロコル・ハルム「青い影」、ビートルズ「レットイットビー」から「秋桜」「蘇州夜曲」「翼をください」…妹の律が高校生になるとレッドホットチリペッパーズやニルヴァーナ。
中川さんが年末たまたま紅白歌合戦で石川さゆりが歌う演歌を聞いて感動したとおっしゃいました。
津村さんが、それで言うたら…増位山という力士の「そんな女のひとりごと」という演歌の歌詞がすごいと。
スナックで働いている女の人の物語だそうです。
そんな力士、いたなあ!帰ってアップルミュージックで検索すると出てきました。
「お店の勤めは初めてだけどマキさんの紹介であなたの隣に座ったの」とはじまり、ボトルの名前で「あなた」が遊び慣れてるとわかる…みたいな世界。
「マキさん」で宇都宮まきさんの顔が浮かび、完全に新喜劇になってしまった。
「スナック 花月」というより「ラウンジ 花月」でしょうか。
そんな女のひとりごと
津村さんは「ストリートライト マニフェスト」というバンドを激しくオススメしてくださいました。
着ているTシャツは全て彼らのバンドTなんだそうです。
聞いてみるとスカなバンドでした…スカパンクってかいてあった。
仕事中小さい音で流すにはすごくいい。
曲が途切れて静かになったときの静けさもすごくいい。
「グリーン デイみたいなバンド」と中川さんに説明しておられましたが、中川さんは「グリーン デイ、わからん」とのこと。
わたしはストリートライト マニフェストがグリーン デイみたいってのがわからん。
Everything Goes Numb [Analog]
読書の話
スマホを見るかわりに本を読むのがいいとおっしゃっていました。
ネット記事は記事を探すのがストレスとなり、SNSはどんどん話題が変わるのがストレスになる。
また、ドラマを見るなら情報量を自分で調節できる本を読んだ方が疲れないと。
ドラマを見るとついインテリアとか登場人物の後ろに並んでる本のタイトルとか見てしまうけど、本を読むならそこは自分次第ですもんね。
散歩、喫茶、読書…いろいろストレス解消法があるが、読書は6分でストレス解消でき、一番効率がいいという研究結果が出ているそうです。
読める日に読む。
内容を忘れぬよう、間をあけずにできるだけ続けて読む。
4日前に読んでめっちゃくちゃ面白くてオススメ!と「マルティン・ベック 笑う警官(角川文庫)」を紹介されました。
北欧ミステリーの古典で、スウェーデンのこともわかって面白いんだそうです。読みます。
そういえば。
電子書籍が少な目の津村さんですが、最近は新刊が出てから3年後に文庫化と同時に電子化されるそうです。
3年待つのか。
サイン会
スタンダードブックストアで買った本じゃなくてもサインしてくださるとのこと。
読み終えて形が崩れた本だけど、サインしていただきました。
わたしの難読名前を何回も「かっこいい」と言ってくださいました。
うれしいなあ。
津村さんのサインは毎度タイトル関連のかわいいイラスト入りです。
文字もかわいいし、うれしいなあ。
津村さんと中川さんの会話は面白いし、興味深いお話ばかりだったし、しあわせいっぱいで帰りました。
雨上がりの暗い天王寺にもありがとう。
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